持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

英和辞典と英英辞典

教材研究での使用

英語の教師もやってるので、自宅の仕事場にはそれなりに英語の辞書がある。教材研究のときには英和辞典と英英辞典をいくつか併用している。英和辞典のメインは『アドバンストフェイバリット英和辞典』(東京書籍)。これは執筆者の一人としてモニター的な意味合いもあって、極力使うようにしている。記述に問題がありそうなときは赤の極細ペンで書き込みをして、改訂に備えておく。他に使うのは『Eゲイト英和辞典』(ベネッセ)や『ヴィスタ英和辞典』(三省堂)。くせのある辞書ばかりと言われればその通りだが、語法知識の提示をする際に参考になるのはこういう辞書なのだ。
英英辞典では、Oxford Advanced Learner's DictionaryやLongman Dictionary of Contemporary Englishも使うのだが、メインはMacmillan English Dictionaryである。Oxford Wordpower Dictionaryなどは初版しか持っていないので新しいのを買おうか検討中。大学1年の時と大学を出てすぐの頃に英英辞典をごっそり買ったので、その時の版のものが本棚の大半を占めている。マクミランの辞書はその中でも比較的新しいもので、『アドバンスト』の制作も大詰めを迎えていたときに、編集委員の先生方や日本アイアールの担当の方のあいだで話題になっていたので手に入れたものである。英英辞典は英和の語義のぶれをチェックしたり、英和辞典では埋もれがちな用法を確認する場合などに活用している。特殊なものではOxford Dictionary of Phrasal Verbsがおもしろい。他の句動詞辞典と違い、主語や目的語などの意味役割が明記されている。

語義の問題

英英辞典は英単語の「本当の意味」を載せていると言われる。果たして真相はいかに。例えば、LDOCEの第3版ではtrainを引くとa number of connected carriages pulled by an engine along a railway lineとある。これだとディーゼル機関車が牽引する客車列車という意味になってしまう。日本では半世紀前から長距離列車にも動力分散方式が導入されている。これはtrainではないのだろうか。PODではa series of carriages or wagons moved by a locomotiveとなっている。これだと機関車牽引列車全般を指し、旅客列車だけでなく貨物列車をも含む概念であるとわかる。でも動力分散方式は含まれない。もちろん、日本と比べると英語圏では機関車牽引のものが主流なのかもしれない。しかし、tramがtrainの下位語なのかどうかなどがこれでは分からないのだ。LDOCEはengineをlocomotiveと同義で使えるかのように記述しているが、もしこれが英語話者の実態ならば、津波をtidal waveと呼ぶのと同様の事実誤認が定着していることになる。はたしてmotormanはengineを運転するのだろうか。