文章における論理とは何か(その4)
論理に対する態度
言語活動に際して、なぜ論理的ということが問われるのだろうか。野内(2008)は、日本人がこれまで論理を重んじてこなかったことへの反動ではないかと指摘している。沢田(1962)は「論理」に対する人々の反応は両極端に分かれるという。ひとつは論理に対する感情的な敵意であり、もうひとつは感情的な信頼である。前者の感情を抱く人は、物事の真理がリクツを超えたところにあると考える。これに対して後者の感情を抱く人は、論理的な言動こそが人間の知性の基盤となるのだと考える。野内の捉え方に従えば、日本人はこれまで前者のタイプの人が多かったが、現在では後者の立場を取る人が増えてきたということになろう。このため、沢田(1962,1976)で言うように、論理学の可能性と限界を正しく認識することが必要であろう。
日本語と論理
日本人は論理的に考えることが苦手な民族であると言われることがある。高橋(2004)はこの問題が日本語の表現形式に起因するという。だが、川本(1978)や安藤(1986)などで指摘されているように、日本語にも一定の論理性を支える仕組みが備わっており、それを駆使するかしないかは、日本語の担い手の問題であって、日本語自体の問題ではない。高橋も日本語の論理的な使い方を目指すべきとしており、非論理性が日本語の致命的な欠陥とは考えていないようである。
参考文献
- 安藤貞雄(1986)『英語の論理・日本語の論理』大修館書店.
- 川本茂雄(1978)『ことばの色彩』岩波新書.
- 野内良三(2008)「論理と説得:詭弁のすすめ」『言語』37(3) pp.68-75.
- 沢田允茂(1962)『現代論理学入門』岩波新書.
- 沢田允茂(1978)『考え方の論理』講談社.
- 高橋昭男(2004)『日本語のテクニカルライティング』岩波書店.
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