日英の文章構成の学習
英語の場合
英語の読解指導・読解学習の全体的な流れは、以前示したとおりである。
日本人学習者は一般的には、日常生活のなかで英語に触れる機会は少ないので、このようなボトムアップの手順を経るのが有効である。
日本語の場合
英語と違い、日本語は日常生活のなかで触れる言語であり、学習者は日本語を生活言語としている。このため外山(1987)の言うように、パラグラフ→文→単語のような、トップダウンの手順を経る方が現実的である。時枝(1950)などの文法研究書では伝統的に語から文、文から文章という配列でまとめられることが多い*1。しかし、理論言語学と応用言語学は目的が違い、国語学での配列がそのまま国語教育・国語学習の手順と同じになるとは限らない。
外国語である英語の場合、読む場合でも、書く場合でも、外国語であるがゆえに文法を意識すること多い。しかし日本語は母語という近しい言語であるがゆえに文法を意識することが少ない。そのなかでも比較的文法を意識することが多いのが、文章を書く場合である。このため日本語の文章構成を学習するには、文章を書く機会を確保しなければならない。
実は日本語の文章構成をトップダウンで学ぶ理由は、日本語が母語であるからという理由だけではない。日本語は英語比べて語順の自由度が高く、また文における文法的に義務的な要素が英語と比べて少なく、省略が生じやすい。このためコンテクストがないと文文法を捉えることが難しい。
日英双方の文章構成を学ぶことでの相互作用
日本語の文章の全体的構造を学ぶことで、英語の学習の際にも文章全体を見渡さなければ英文が理解できないということを自覚できるようになる。また英語の文章構成を学ぶことにより、西洋式のレトリックに触れ、読み手に配慮した文章を書くということに自覚的になり、それが日本語の文章表現にも活かされるようになる。さらに日本語の文法や語彙に対する意識が高まることで、訳読の際に生じる不自然な日本語が日常生活の中に入り込んで学習者の日本語を歪めてしまうことも防ぐことができる。