持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

古典文法のこと

英文法と比べて思うこと

先日の慶応の学習英文法シンポジウムで、日本語を母語とする学習者の英文法学習のあり方をめぐって議論が交わされた。それと比べると、古典文法のあり方をめぐる議論はあまり活発でない。古典教育において古典文法は障害であり、それを取り除くことで、より多くの学習者が古典を味わうことができるようにするという方向に向かっている。だが、古典を「味わう」ものと捉えるかどうかは学習者個々の問題であり、教師が強制するものではない。それよりも、古典テクストに現れることばが過去の日本語としてのまぎれもない言語事実である以上、それと現代日本語を突き合わせることで、言語に対する意識を高めていくことに古典教育の意義があると私は考える。
このように古典教育を言語教育の一環として捉えるならば、そのための授業はどうあるべきか、その際の言語活動に耐えられる教育古典文法の体系はどうあるべきかということを考えなければならない。学習英文法が教育文法として、英語の理論研究や記述研究の知見を援用しつつも独自の枠組みを持たなければならないのと同様、古典の教育文法もまた、四大文法家の研究やその後の日本語学の研究の知見を生かしつつも、古典教育の目的にふさわしい体系を持たなければならない。そのための議論を活発化させていく必要があるように思う。