持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

平成10年告示高等学校学習指導要領「国語」における「国語総合」

1 目標

国語を適切に表現し的確に理解する能力を育成し,伝え合う力を高めるとともに,思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨き,言語文化に対する関心を深め,国語を尊重してその向上を図る態度を育てる。

2 内容

A 話すこと・聞くこと

次の事項について指導する。

  • ア 様々な問題について自分の考えをもち,筋道を立てて意見を述べること。
  • イ 目的や場に応じて,効果的に話したり的確に聞き取ったりすること。
  • ウ 課題を解決したり考えを深めたりするために,相手の立場や考えを尊重して話し合うこと。
B 書くこと

次の事項について指導する。

  • ア 相手や目的に応じて題材を選び,効果的な表現を考えて書くこと。
  • イ 論理的な構成を工夫して,自分の考えを文章にまとめること。
  • ウ 優れた表現に接してその条件を考え,自分の表現に役立てること。
C 読むこと

次の事項について指導する。

  • ア 文章の内容を叙述に即して的確に読み取ったり,必要に応じて要約したりすること。
  • イ 文章を読んで,構成を確かめたり表現の特色をとらえたりすること。
  • ウ 文章に描かれた人物,情景,心情などを表現に即して読み味わうこと。
  • エ 様々な文章を読んで,ものの見方,感じ方,考え方を広げたり深めたりすること。
〔言語事項〕

話すこと・聞くこと,書くこと及び読むことの指導を通して,次の事項について指導する。

  • ア 目的や場に応じた話し方や言葉遣いなどを身に付けること。
  • イ 文や文章の組立て,語句の意味,用法及び表記の仕方などを理解し,語彙を豊かにすること。
  • ウ 常用漢字の読みに慣れ,主な常用漢字が書けるようになること。
  • エ 文語のきまり,訓読のきまりなどを理解すること。
  • オ 国語の成り立ちや特質,言語の役割などを理解すること。

3 内容の取扱い

  • (1) 総合的な言語能力を養うため,内容のA,B,C及び〔言語事項〕について相互に密接な関連を図りながら効果的に指導するようにする。
  • (2) 内容のAに関する指導については,次の事項に配慮するものとする。
    • ア 話すこと・聞くことを主とする指導には15単位時間程度を配当するものとし,計画的に指導を行うこと。
    • イ 話をよく聞き取る能力や態度を身に付けさせること。
    • ウ 指導に当たっては,例えば次のような言語活動を通して行うようにすること。
      • (ア) 話題を選んで,スピーチや説明などを行うこと。
      • (イ) 情報を収集し活用して,報告や発表などを行うこと。
      • (ウ) 課題について調べたり考えたりしたことを基にして,話合いや討論などを行うこと。
  • (3) 内容のBに関する指導については,次の事項に配慮するものとする。
    • ア 書くことを主とする指導には30単位時間程度を配当するものとし,計画的に指導を行うこと。
    • イ 指導に当たっては,例えば次のような言語活動を通して行うようにすること。
      • (ア) 題材を選んで考えをまとめ,書く順序を工夫して説明や意見などを書くこと。
      • (イ) 相手や目的に応じて適切な語句を用い,手紙や通知などを書くこと。
      • (ウ) 本を読んでその紹介を書いたり,課題について収集した情報を整理して記録や報告などを書いたりすること。
  • (4) 内容のCに関する指導については,次の事項に配慮するものとする。
    • ア 古典と近代以降の文章との授業時数の割合は,おおむね同等とすることを目安として,生徒の実態に応じて適切に定めること。なお,古典における古文と漢文との割合は,一方に偏らないようにすること。
    • イ 文章を読み深めるため,音読や朗読などを取り入れること。
    • ウ 読書力を伸ばし,読書の習慣を養うこと。
    • エ 指導に当たっては,例えば次のような言語活動を通して行うようにすること。
      • (ア) 文章に表れたものの見方や考え方などを読み取り,それらについて話し合うこと。
      • (イ) 考えを広げるため,様々な古典や現代の文章を読み比べること。
      • (ウ) 課題に応じて必要な情報を読み取り,まとめて発表すること。
  • (5) 内容の〔言語事項〕については,次の事項に配慮するものとする。
    • ア 中学校の指導の上に立って,内容のA,B及びCの指導の中で深めること。
    • イ エについては,読むことの指導に即して行う程度とすること。なお,口語のきまり,言葉遣い,敬語の用法などについても,必要に応じて扱うこと。
  • (6) 教材については,次の事項に留意するものとする。
    • ア 教材は,話すこと・聞くこと,書くこと及び読むことの能力を偏りなく養うことや読書に親しむ態度を育てることをねらいとし,生徒の発達段階に即して適切な話題や題材を精選して調和的に取り上げること。また,上記(2)のウ,(3)のイ及び(4)のエに掲げる言語活動が十分行われるよう教材を選定すること。
    • イ 教材は,次のような観点に配慮して取り上げること。
      • (ア) 言語文化に対する関心や理解を深め,国語を尊重する態度を育てるのに役立つこと。
      • (イ) 日常の言葉遣いなど言語生活に関心をもち,伝え合う力を高めるのに役立つこと。
      • (ウ) 思考力を伸ばし心情を豊かにし,言語感覚を磨くのに役立つこと。
      • (エ) 情報を活用して,公正かつ適切に判断する能力や創造的精神を養うのに役立つこと。
      • (オ) 科学的,論理的な見方や考え方を養い,視野を広げるのに役立つこと。
      • (カ) 生活や人生について考えを深め,人間性を豊かにし,たくましく生きる意志を培うのに役立つこと。
      • (キ) 人間,社会,自然などに広く目を向け,考えを深めるのに役立つこと。
      • (ク) 我が国の文化と伝統に対する関心や理解を深め,それらを尊重する態度を育てるのに役立つこと。
      • (ケ) 広い視野から国際理解を深め,日本人としての自覚をもち,国際協調の精神を高めるのに役立つこと。