持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

キャッチフレーズ式の英語教育?

なんだか分からないうちに・・・

文法偏重じゃない、訳読中心じゃない、今風で、おしゃれで、トレンディーな英語教育には、キャッチフレーズがつきまとうことが多い。

キャッチ-フレーズ [5] [catchphrase]宣伝・広告などで,人の心をとらえるように工夫された印象の強い文句。うたい文句。惹句(ジヤツク)。(『大辞林』第2版)

そんなナウな英語教育につきまとうキャッチフレーズの中でも、もっとも頻繁に飛び交っている言葉が「コミュニカティブ」や「コミュニケーション」である。長崎(1994:9)は「コミュニケーションとは何かという本質的な部分が十分に省察されることなく、言葉のみが一人歩きしてしまっているようである」と述べている。残念ながらこの状況は十数年間変わっていない。つなり、キャッチフレーズ先行で、中身が本当にコミュニカティブかどうかは二の次なのである。

キャッチフレーズに流れる原因とは何か

英語教育がキャッチフレーズに踊らされている原因として最も大きいものが、文法、訳読、丸暗記といった苦痛を伴う割に成果の乏しかった英語教育/学習に対する過剰反応であるといえる。従来の文法指導の成果と問題点とは何か、訳読の問題点とは何か、丸暗記に代わる言語知識の定着法はないのか、といった問題に正面から向き合うことをせずに、雰囲気だけで英語を教えていることがあまりにも多すぎるのではないか。
文法学習のあり方を見直すには、教師が今まで以上に文法を知らなければならない。しかし過去に経験した文法学習が苦痛であった人たちにとって、この作業は拷問でしかない。コミュニカティブを標榜すれば、文法について無知であっても「先進的な教師」でいられる。しかし、高島(1995)や小柳(2004)が指摘するように、「グラマーの授業」がないからと言って、教師が文法を知らなくてもいいことにはならないのである。
こういう視点がないと、授業をしている瞬間は学習者もなんとなく英語を話している気になっているけれども、授業が終わるとその日に何を学んだのかがよく分からないし、そういう授業を何時間も続けていても、自分の英語力が伸びた気がしない、という事態に陥らせてしまうのである。

参考文献

  • 小柳かおる(2004)「教室第二言語習得研究と英語教育」『英語教育』53(6) pp.8-11.
  • 長崎政浩(1994)「英語教師としての哲学・自覚」『現代英語教育』31(7) pp.8-10.
  • 高島英幸(1995)『コミュニケーションにつながる文法指導』大修館書店.

コミュニケーションにつながる文法指導

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