持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

日英比較文章論

説明的文章の基本構造

寺島(1986)は文章を説明的文章と文学作品に大きく二分した上で、説明的文章の基本構造として次のようなモデルを提案している。

  • 前文(Opening)
  • 本文(Main)
    • 序論(Introduction)
    • 本論(Discussion)
    • 結論(Conclusion)
  • 後文(Closing)

前文と序論との違いは前文が主題に言及せずに読者が知っていたり興味を持っていそうな事実について述べたりするのに対して、序論は必ずGeneral Statementが示され主題(Main Idea)を明示しているところにある。
結論と後文の違いは結論が本論を通して述べてきたことを再度まとめ直したものであるのに対して、後文は本文を書き終えたあとの書き手の感想・感情を表出する場であるところにある。
寺島はこうした基本構造を設定した上で、日本語では序論を省略することが多いのに対して英語では結論を省略することが多いと指摘している。
一方、上村(1993)は英語の文章における序論の目的として次の2つを挙げている。

  1. 読者の関心を引きつけること
  2. 文章全体の論旨を読者に伝えること

つまり寺島の基本構造で言うところの前文と序論の機能を、英語では序論としてまとめて担っているということである。

小括

日本語と英語では語順を異にするため英語の語順を知らなければ英語を読めるようにならない。これが英文解釈という形で読解文法が古くから学ばれてきた理由である。しかしすでに見たように日本語と英語では文構造だけでなく文章構造も異なっている。このため英語の文章に関する知識もまた学ばなければ英語の文章を十分に理解することはできないのである。文構造に関する知識と文章構造に関する知識の両方が形式スキーマとして必要なものなのである。

参考文献

  • 上村妙子(1993)「英語を書くコミュニケーション」橋本・石井編『英語コミュニケーションの理論と実際』桐原書店
  • 寺島隆吉(1986)『英語にとって学力とは何か』三友社出版.