持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

日常会話って・・・

英語を勉強し始めると、「日常会話くらいはできるようにならないと・・・」という人が多い。だが外国語として英語を学んでいく上で、日常会話ほど難しいものはない。

日本にいても、英語を読んだり書いたりする機会は結構ある。仕事で英語を話す機会も、職種によっては結構あるだろう。でも家に帰れば日本人の親兄弟、あるいは妻(夫)や子どもがいる。テレビをつければ日本語の放送。夕刊も日本語で書いてある。この環境では英語が日常会話に入り込む余地がない。

英会話を習いに行くのも一興だが、密室での会話である。時間的にも制約がある。金を払っているから無理にでも話そうとする。でも日常会話はそうではない。医者・患者の問診や教師と生徒との遣り取り、取引先との商談などは比較的会話の目的が明確だから、それに近いことを教材を使って実践的に学ぶことも容易である。しかし、ときに暇つぶし以外に明確な目的のないようなだらだらした会話が自由にできる能力は、そう簡単には身に付かないのだ。

このことは逆にいえば、日常会話が英語で出来なくても、大半の日本人にとっては問題ないということでもある。それならいっそのこと、家庭内で日本語を使わずに英語で生活したら、という発想も出てくる。特に子どもが英語を身につけるには最適ではないか、と。だが今の日本の大人は日本社会で日本語ができない苦労がどれほどのものか知らない。日本では英語ができることで得られるメリットよりも、日本語ができないことによって被るデメリットの方が大きいのだ。