持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

読解指導・読解学習の手順④

予備的な読み

従来の文法訳読の問題点はこれまでにさまざまな点が指摘されてきたが、訳読そのものだけでなく、どんな文章なのかも分からないでいきなり訳読を始めてしまうというストラテジーにも問題があると言える。天満(1989)は文章レベルの読解ストラテジーとして「予備的な読み」の必要性を指摘し、予備的な読みの具体的な方法としてスキミング(skimming)とスキャニング(scanning)を挙げている。

スキミング

スキミングについてMikulecky and Jefferies(1996:132)は学習者に向けて次のように定義している。

Skimming is high-speed reading that can save you lots of time. You skim to get the general sense of a passage or a book.

スキミングはこのように文章の内容を大づかみにするものであるから、パラグラフごとにトピックセンテンスを読んでいくことになる。

スキャニング

スキャニングについてMikulecky and Jefferies(1996:15)は学習者に向けて次のように定義している。

Scanning is very high-speed reading. When you scan, you have a question in mind. You do not read every word, only the word that answer your question. Practice in scanning will help you learn to skip over unimportant words so that you can read faster.

スキャニングの場合は、読み手にとって必要な情報だけを探し出す読み方であり、試験対策では設問に答えるために必要なストラテジーとなる。

精読の前提としての速読

Upton(2004)は学生向けの研究技術(study skills)としての読解ストラテジーを扱っているが、そこではスキミングを実際に文章を読む前段階の活動と位置づけ、スキミングによって読み取るべき内容と読む順序を決定していくという方法を提示している。これは先述の天満の言う予備的な読みをより実践的な視点で扱ったものと言える。
したがって精読をするためにも速読は必要であり、スキミングとスキャニングはさまざまな場面で利用できる読解ストラテジーとして高校レベルでも身につけておきたいものと言える。

参考文献

  • Mikulecky, B. S. and Jefferies, L. (1996) More Reading Power. Addison Welsley.
  • 天満美智子(1989)『英文読解のストラテジー』大修館書店.
  • Upton, T. A. (2004) Reading Skills for Success. Ann Arbor: The University of Michigan Press.