持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その10)

Chapter 2 動詞と文型(その6)

5.の「S+V+C」については事実だけを示し、立ち入った解説をしていない。この文型は阿部・持田(2005)にも項目を立てていない。解説をつけていないのはもっぱら紙幅の制約によるものであるが、中途半端は許されないのでそれなりの分量で書かないとという思いはあった。持田が担当する駿台の「高3ハイレベル英語総合」やどこゼミの「英語基礎(気づいて、感じて、わかる英文法:基礎と本質)」などでは当然本書以上の解説を行っている。
実際の授業では、日本語と英語で述語になれる品詞に違いがあることを生徒に確認させる。

鳥は飛ぶ。[動詞]
鳥は美しい。[形容詞]
鳥は動物だ。[名詞+だ]

安藤(1986: 75)は「日本語の共通語では、述語が形容詞の場合、繋辞(copula)が表現されない。」と指摘しているが、要は形容詞だけで日本語は述語を形成するということである。このことを学習者に意識させるためにまずは上に挙げた文が文法的に正しいことを確認する。その上でこれらの日本文を英語に「直訳」してその適否を考えてもらう。

Birds fly.
Birds beautiful.
Birds animals.

ここで明らかにおかしいと感じる学習者、何となくおかしいと感じる学習者、なかには「?」という学習者もいる。ここでどうすれば正しい英語の文になるか考えてもらい、正しい形を導入していく。

Birds fly.
Birds are beautiful.
Birds are animals.

ここで英語では形容詞や名詞を述語にした文を作るにはbeが必要であることを確認してもらう。これは高3向けの授業の場合であり、状況によってはさらにbeについて時間を割いて解説していく必要があろう。ここで重要なことはbeの導入にあたって、安易に「イコール」という概念を持ち込まないことである。beを使った文であっても実際にはS=Cが成り立つ場合と成り立たない場合があり、数学で=の概念を正しく学んだ学習者にとっては安易な「イコール」がこの文型を理解するときの足かせとなることも考えられる。この点は隈部(2002)や日向(2014)でも指摘されている。

参考文献

  • 阿部一・持田哲郎(2005)『実践コミュニケーション英文法』三修社
  • 安藤貞雄(1986)『英語の論理・日本語の論理』大修館書店
  • 日向清人(2014)『即戦力がつく英文法』DHC
  • 隈部直光(2002)『教えるための英文法』リーベル出版