持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

高等学校・新学習指導要領案を考える(その2)

コミュニケーション英語基礎

この科目の目標は、「英語を通じて、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育成するとともに、聞くこと、話すこと、読むこと、書くことなどの基礎的な能力を養う。」となっている。また、内容面では中学校での学習と「コミュニケーション英語I」との橋渡し的な科目という位置づけであるため、中学校の学習指導要領で挙げられている言語活動や学習事項を参考にして指導することになっている。
そこで、中学校学習指導要領における言語活動について見てみることにする。まずは「聞くこと」から*1

  1. 強勢,イントネーション,区切りなど基本的な英語の音声の特徴をとらえ,正しく聞き取ること。
  2. 自然な口調で話されたり読まれたりする英語を聞いて,情報を正確に聞き取ること。
  3. 質問や依頼などを聞いて適切に応じること。
  4. 話し手に聞き返すなどして内容を確認しながら理解すること。
  5. まとまりのある英語を聞いて,概要や要点を適切に聞き取ること。

次いで、「話すこと」を見ていく。

  1. 強勢,イントネーション,区切りなど基本的な英語の音声の特徴をとらえ,正しく発音すること。
  2. 自分の考えや気持ち,事実などを聞き手に正しく伝えること。
  3. 聞いたり読んだりしたことなどについて,問答したり意見を述べ合ったりなどすること。
  4. つなぎ言葉を用いるなどのいろいろな工夫をして話を続けること。
  5. 与えられたテーマについて簡単なスピーチをすること。

「読むこと」は以下の通り。

  1. 文字や符号を識別し,正しく読むこと。
  2. 書かれた内容を考えながら黙読したり,その内容が表現されるように音読すること。
  3. 物語のあらすじや説明文の大切な部分などを正確に読み取ること。
  4. 伝言や手紙などの文章から書き手の意向を理解し,適切に応じること。
  5. 話の内容や書き手の意見などに対して感想を述べたり賛否やその理由を示したりなどすることができるよう,書かれた内容や考え方などをとらえること。

最後は「書くこと」である。

  1. 文字や符号を識別し,語と語の区切りなどに注意して正しく書くこと。
  2. 語と語のつながりなどに注意して正しく文を書くこと。
  3. 聞いたり読んだりしたことについてメモをとったり,感想,賛否やその理由を書いたりなどすること。
  4. 身近な場面における出来事や体験したことなどについて,自分の考えや気持ちなどを書くこと。
  5. 自分の考えや気持ちなどが読み手に正しく伝わるように,文と文のつながりなどに注意して文章を書くこと。

中学校ではこうした言語活動と並行して言語材料について理解したり練習したりする活動を行うこととされている。

中学校学習指導要領における言語材料
  1. 音声
    1. 現代の標準的な発音
    2. 語と語の連結による音変化
    3. 語,句,文における基本的な強勢
    4. 文における基本的なイントネーション
    5. 文における基本的な区切り
  2. 文字及び符号
    1. アルファベットの活字体の大文字及び小文字
    2. 終止符,疑問符,コンマ,引用符,感嘆符など基本的な符号
  3. 語,連語及び慣用表現
    1. 1,200語程度の語
    2. in front of,a lot of,get up,look forなどの連語
    3. excuse me,I see,I'm sorry,thank you,you're welcome,for exampleなどの慣用表現
  4. 文法事項
      1. 単文,重文及び複文
      2. 肯定及び否定の平叙文
      3. 肯定及び否定の命令文
      4. 疑問文のうち,動詞で始まるもの,助動詞(can,do,mayなど)で始まるもの,orを含むもの及び疑問詞(how,what,when,where,which,who,whose,why)で始まるもの
    1. 文構造
      1. [主語+動詞]
      2. [主語+動詞+補語]のうち,
        1. 主語+be動詞+名詞/代名詞/形容詞
        2. 主語+be動詞以外の動詞+名詞/形容詞
      3. [主語+動詞+目的語]のうち,
        1. 主語+動詞+名詞/代名詞/動名詞/to不定詞/howなどto不定詞/that節
        2. 主語+動詞+whatなどで始まる節
      4. [主語+動詞+間接目的語+直接目的語]のうち,
        1. 主語+動詞+間接目的語+名詞/代名詞
        2. 主語+動詞+間接目的語+howなどto不定
      5. [主語+動詞+目的語+補語]のうち,
        1. 主語+動詞+目的語+名詞/形容詞
      6. その他
        1. There+be動詞+〜
        2. It+be動詞+〜(+for〜)+to不定
        3. 主語+tell,wantなど+目的語+to不定
    2. 代名詞
      1. 人称,指示,疑問,数量を表すもの
      2. 関係代名詞のうち,主格のthat,which,who及び目的格のthat,whichの制限的用法
    3. 動詞の時制など
      • 現在形,過去形,現在進行形,過去進行形,現在完了形及び助動詞などを用いた未来表現
    4. 形容詞及び副詞の比較変化
    5. to不定
    6. 動名詞
    7. 現在分詞及び過去分詞の形容詞としての用法
    8. 受け身

なお、言語材料については、言語活動と効果的に関連づけることや英語の特質を理解させるために効果的に指導することといった留意事項が添えられている。(つづく)

*1:はてなの書式に合わせてカナ表記の項目符合を番号に改めている、