持田哲郎(言語教師@文法能力開発)のブログ

大学受験指導を含む文法教育・言語技術教育について書き綴っています。

2019年センター試験・第3問Aを読む(問1を例に)

問1 When flying across the United States, you may see giant arrows made of concrete on the ground. 文章の冒頭が疑問文になっていて、書き手が読み手に対して問題提起を行うことがある。Whenで始まる文では、Whenの直後が倒置になっていないかを確認し…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その7)

語順と語形(続き) 前回までは動詞を修飾する語句について述べていた。「前置詞+名詞」が動詞を修飾する場合を分類すると、様態、場所、時、頻度以外のものも当然存在する。これらの語句も分類が可能であるが、『短文で覚える英単語1900』に収録されている…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その6)

語順と語形(続き) 英語の副詞、とりわけ様態を表す副詞の扱いには、注意が必要である。ここには英語と日本語で品詞のズレが存在する。 日本語の場合、形容詞または形容動詞の連用形というものがあって、それが英語の副詞と同じ働きをしているので、なおさ…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その5)

語順と語形(続き) 副詞の扱いを巡る議論については前回触れた。今回は基本文構造を導入する段階では副詞の機能を定義することを避けた。品詞は8品詞のうち、動詞、名詞、形容詞、副詞を「基本4品詞」とし、これら4品詞の導入にあたっては意味による定義を…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その4)

語順と語形(続き) 「名詞+動詞+名詞」という基本文構造を導入し、動詞との位置関係で主語と目的語を規定し、文の中枢をになう動詞を述語動詞と定義して現在形か過去形を使うとした。そして人称代名詞を導入し、主語と目的語の名詞を「冠詞(の仲間)+形…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その3)

語順と語形(続き) 英語の最重要文型として「名詞+動詞+名詞」というパターンを提示し、動詞の左側の名詞を主語、右側の名詞を目的語とそれぞれ規定した。文の要となる動詞は「述語動詞」というもので、現在形か過去形を使うことにも触れた。さらに名詞句…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その2)

語順と語形 教育文法は学習者がことばを使いこなすために学ぶ文法であり、そのために教師が教える文法である。この辺りの詳細は『駿台教育フォーラム』に掲載された拙稿*1で言及している。Larsen-Freeman*2は教育文法にはFORM、MEANING、USEのThree Dimensio…

英語基礎:Sアカデミー「英語S」の背景(その1)

講座のコンセプト 千葉市美浜区、幕張ベイタウンにある学習塾、「Sアカデミー」の組田幸一郎代表からこの講座を担当して欲しいとのお話をいただいたのが昨年の春のこと。講座の趣旨は、高校2年生が秋から勉強を始めてGMARCHレベルの大学に合格できる力をつけ…

はてなダイアリーからはてなブログへ

ご無沙汰しております。言語教師の持田です。このたび、はてなダイアリーからはてなブログへ移行しました。前回の更新から1年以上経っておりますが、今後は少し更新頻度を上げていければと考えております。ブロギングポリシーはこれまで同様としますが、Face…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その13)

Chapter 2 動詞と文型(その9) 7ではS+V+O+Cを扱っている。7.1.ではこの文型の成り立ちを示している。ここで文を〈情報〉ではなく〈出来事〉として埋め込む場合と述べているが、これはp.108のthat節のところで詳述している。中村(2009: 63)は、seeやhe…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その12)

Chapter 2 動詞と文型(その8) 6.4.に「伝える」という意味の動詞という項目を立てた。これは前回の枠組みで言うと「あげる」の動詞群の下位類となる。この動詞群を独立した項目としたのは、これらの動詞がthat節をとることができるためである。阿部・持田…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その11)

Chapter 2 動詞と文型(その7) 6の「S+V+O+O」ではまず、「あげる」と「してあげる」という2つのグループに動詞を分類している。中村(2003)は、I'll buy you this shirt.という文に「私がおまえにこのシャツを買うだろう」という直訳を与え、この直訳自…

明海大学複言語複文化教育センター主催シンポジウム講演資料

ご無沙汰しております。 以前告知しておりました明海大学複言語複文化教育センター主催シンポジウム「英語教育と国語教育の連携を巡って」が延期を経て2016年6月11日に開催されました。持田が当日使用したスライド及び当日配布した資料を公開いたします。当…

シンポジウム「英語教育と国語教育の連携を巡って」

2月27日に明海大学新浦安キャンパスで開かれるシンポジウムにシンポジストとして登壇することになりました。日頃持田が授業でやっていることの一端をご紹介しながらの話題提供になるかと思います。東京駅*1から十数分の新浦安です。観覧車が見えてシンデレラ…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その10)

Chapter 2 動詞と文型(その6) 5.の「S+V+C」については事実だけを示し、立ち入った解説をしていない。この文型は阿部・持田(2005)にも項目を立てていない。解説をつけていないのはもっぱら紙幅の制約によるものであるが、中途半端は許されないのでそれ…

facebookページ10月3日付更新のための学習書

たのしい英文法 改訂版作者: 林野滋樹+改訂版編集委員会〈改訂版編集委員〉代表 奥西正史委員 瀧口 優 柳沢民雄〈改訂版編集協力〉吉浦潤次 山口良子 竹内一浩 保坂芳男出版社/メーカー: 三友社出版発売日: 2011/11/01メディア: 単行本(ソフトカバー)購入:…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その9)

Chapter 2 動詞と文型(その5) 4.2.〜4.6.はS+V+O+Aの文型を扱っている。これらは阿部・持田(2005)でも取り上げている。文型に番号を振れば「5文型」の枠組みか「7文型」の枠組みかというところで悩むのであるが、本書では文型に番号を振っていないので…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その8)

Chapter 2 動詞と文型(その4) 4.S+V+Oという項では、まず4.1.で「英語の文の最重要パターン」としてこの文型を取り上げている。ここで「目的語」という文法用語の定義を行っているが、この定義は動詞との位置関係によって規定している。つまり、「〜を…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その7)

Chapter 2 動詞と文型(その3) p.15の3.にある「There is/are・・・で始まる文」ではまず、〈存在〉を表す文の3つのパターンを取り上げている。現在執筆準備中の学習書にはhaveも取り上げる予定だが、本書ではここでbeを使った文のみを取り上げている。実…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その6)

Chapter 2 動詞と文型(その2) 本書の文型論は、S+V、S+V+X、S+V+X+Xという3文型を出発点とし、動詞に後続するXにどのような品詞が続くかによって従来の5文型の枠組みで扱われている諸文型をネットワーク化したものである。そのうえで、文型は主に動…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その5)

Chapter 2 動詞と文型(その1) 阿部・持田(2005)では大学教科書という性質上、文型を網羅的に扱うのではなく、学習が比較的困難と思われるところを重点的に扱った。しかし、文型を学習する過程における困難は学習者によってさまざまであり、また今回は高校…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その4)

Chapter 1 英文の基本構造(その3) 3.2.の副詞のところのベースは1990年代後半の中学英語教科書、とりわけ中3教科書の巻末の基本文リストにある。つかみどころのない印象のある副詞を、中学レベルで触れる英語から典型的なものを押さえておこうと考えた。1…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その3)

Chapter 1 英文の基本構造(その2) 3.1.「名詞のまとまりの展開」では冒頭に人称代名詞の表を示してある。この表は一般的な「I−my−me−mine」という配列にはなっていない。1990年代に『英語教育』で連載されていた「英語のカリキュラム」(通称「若林・手島…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その2)

Chapter 1 英文の基本構造(その1) 1.1.の「主語と述語」と1.2.「述語の仕組み」のところは、一般的な英語総合の参考書などと比べて記述内容に大きな違いはない。「述語の仕組み」のところでは、「英語の述語には動詞が必要です」(p.6)とあっさりと言い…

『良問でわかる高校英語』「別冊」の別冊(その1)

Introduction 英語の構造規則と英文理解への応用 本書は一般的な大学受験向け学習参考書と同様に、明示的な文法学習を支援する立場をとる。そしてそこで扱う文法知識は、Larsen-Freeman(1991)のいうFORM/MEANING/USEの3つの次元から捉えるように努めている。…

『良問でわかる高校英語』と『実践コミュニケーション英文法』

2冊を組み合わせて活用することについて 拙著『良問でわかる高校英語』は高校生向けの参考書であり、阿部一先生との共著である『実践コミュニケーション英文法』は大学教科書です。位置づけとしては両者は異なりますが、2冊を組み合わせて授業等で活用するこ…

拙著のご案内

『良問でわかる高校英語』 良問でわかる高校英語: 効率よく得点アップできる厳選問題コレクション作者: 持田哲郎出版社/メーカー: 学研教育出版発売日: 2015/08/25メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る書名にある「高校英語」とは「主に高校生…

facebookページ2月5日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、英文和訳・和文英訳のエクササイズのための例文集として、現時点でお勧めのものをここに挙げておきます。英作文基本300選―英語的発想の日本語をヒントにして覚…

facebookページ2月3日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、ESLの英文法学習書として、現時点でお勧めのものをここに挙げておきます。English Grammar in Use with Answers and CD-ROM: A Self-Study Reference and Prac…

facebookページ1月31日付更新のための文法書ガイド

ご案内 私のfacebookページ「言語教育・持田哲郎(家庭教師・授業・講演・教材執筆)」で触れた、英文法書を読み込む学習のための、現時点でお勧めの組み合わせをここに挙げておきます。完全マスター英文法作者: 米原幸大出版社/メーカー: 語研発売日: 2009/…